卒寿小論 158 嬲(なぶ)り返して腹をいにけり<前句>
赤花夕化粧 季節の花300より
元禄 前句付け「1」(前句)嬲(なぶ)り返して腹をいにけり
あね様のをとこくささは誰(たが)匂ひ 嬲(なぶ)り返して腹をいにけり
参考 嬲る=人をもてあそぶ。からかう。腹を癒(い)る=腹を癒すこと。
周りの人々に大事に育てられた長女や長男。姉様は箱入り娘になりやすい。それに比べれば妹の方は少しやんちゃで男関係も積極的になる。うぶな姉様は箱の封を切ってくれる男が現れるまで箱入り娘で生活をする。
だから、妹の生活態度にたいしての苦言も多かろう。
そんなある日。男の匂いをつけて帰ってきた姉様の匂いを素早く察知して、ここぞとばかりなぶり返す妹の勘の鋭さは体験から来た実力である。
男臭さを一瞬に捉える妹の凄さには恐れ入る。
姉妹であれやこれやと言い合いながら、大人へと健康的に明るく成長していく姿を想像して楽しくなってしまう。
それにしても男臭さってどんな匂いなんだ。江戸時代と現代では男の匂いに違いがあるのだろうか。
ある面では江戸時代とは一部の人にとっては幸せな時代であったと言えるだろう。多くの人の人権が無視された庶民の上に成り立った一部の人の幸せな時代。
それは比率こそ違え現代社会も同じような気がする。