卒寿小論 697 まちがい電話 その2

「もしもし、・・・私、生きてますか。」
「ハイ、立派に生きています。」
「ありがとうございます。受付の河津さんいますか。」
「まちがい電話だと思います。局番違いで、私のうちは66局でたぶん
あなたがお掛けの病院は67局です。近頃、よく局番違いの電話がかかってきます。」
「それは失礼いたしました。・・・あなたの言葉で元気が出てきました。
ありがとうございました。」
「そうですか。それはよかったです。私は今年81歳になりました。」
「私は93歳です。あなたとは一回り違いですね。」
「今日はどうかしましたか。・・・」
「ハイ、近頃、目を覚ましますとしばらく何もわからなくなるんです。
今日も生きているのかなあ。昨日も同じように生きていたんだろうなあ。
そして、10年前も今日と同じ感覚で蘇ってくるのです。」
「立派に生きていますよ。とても参考になりました。
・・・ときどきまちがい電話をしてください。」
「ありがとございます。何か生きているという実感が出てきました。」
まちがい電話はそれで終わった。
その後、93歳のご婦人からのまちがい電話は一度もかかってこなかった。
私も90歳代に入ると自分が生きているのか死んでいるのか分からない
そんな自分を生きているのであろうか。たぶんそうだろう。そのように生きよう。
「生死一如(しょうじいちにょ)」か。
今日はすばらしい「まちがい電話」をありがとう。