卒寿小論675 花の散るのは(游春の曲 送春の辞)王維

(藤 正悟訳)
清き流れの杏のかげ 一夜の風に花開き
仄かに色香ただようて 萌え出るさざ波の中
日々空しく老いて行き 年年春は訪れる
樽酒開けて共に語ろう 花の散るのはまかせよう
游春の曲
萬樹江邊杏 万樹(ばんじゅ)江辺の杏(あんず)
新開一夜風 新たに開く一夜の風
萬園深浅色 満園(まんえん)の深き浅き色
照在緑波中 照りて在り緑波(りょくは)の中
送春の辞
日日人空老 日日人は空(むな)しく老い
年年春更歸 年年春は更に歸る
相歓在尊酒 相歓(あいよろこ)ぶ尊酒(そんしゅ)の在るを
不用惜花飛 用いざれ花の飛ぶを惜しむを
参 考
王維=唐の時代を象徴する自然詩人。李白が詩仙、杜甫が詩聖、王維は詩仏と呼ばれた。
701年~761年(60歳没),仏教を信奉し、早くして妻を亡くす。以後独身を通す。
719年に進士(科挙)に及第、俊才により名声を得る。
親孝行で兄弟とも親しみ妻との仲も「友愛の極み」であった。
詩人、画家、書家、音楽家としても名を残す。
尊酒=樽酒