syougoのブログ

余命ゼロ年代を生きるために

卒寿小論 19 がのをにとへよりからでや <教育>

      

           母校の中学校で定年退職  感 謝


 国語で文法の授業ほど退屈で面白くない授業はなかった。


ゲーム感覚で面白い文法の授業はできないか。と考えて実践したのが次の授業である。


 次の□の中にひらがな1字を入れて文を完成させなさい。いくつの文ができるかな。


  彼□彼女□結婚する。


 あっという間にどんどん手が挙がって次々と発言者が増えた。こんなに発言者が増えたのは久しぶりである。


 小学生と違って中学生になると発言者が急に減る。そこで出席簿順や席順で指名していくことが多くなる。
 そのような指名発言を求める時は「発言する自由があるのと同じく、発言しない自由もある。発言したくない時はパスか今考えています。と、言ってください。質問とは関係のないことを言いたい時は1分以内の時間をあげますので自由につかってください。」


 このような条件を付けておくととても自由な楽しい雰囲気で授業を進めることができるし、発言者も多くなる、中には、1分間の持ち時間を自己紹介や趣味の話で生き生きと活用する生徒も現れた。



① 彼が彼女と結婚する。と 
② 彼は彼女と結婚する。


  この2文が圧倒的に多い。続いて、


③ 彼の彼女と結婚する。 (笑い 生徒の声 ずうずうしい。)
④ 彼の彼女も結婚する。 (ええっ 残ねん。)
⑤ 彼も彼女も結婚する。 (おめでとう。)
⑥ 彼も彼女と結婚する。 (爆笑 やばいんじゃねえ。)


 10以上の文が出来たが以下省略


 多くの文例が出たところで、日本語は仮名一文字で文章の内容がほんの少し変わったり大きく変わったりするので、面白くもあるが難しい点でもある。


 文法の学習に入る前に自分が感じた1文の違いについて考えさせる。
① と②の文で、 彼がと彼は。「が」と「は」の違いを感じますか。


 発言例
「彼がというと結婚するのは彼だ。」
「彼はというとAさんBさんCさんと沢山の人がいる中で結婚したのは彼だ。」という感じを
 受けました。」


 なるほどするどい。


 そこで中学国語便覧(118頁)を開けて文法の学習に入る。と、面白くない文法が俄然活気を出してくる。


 今日は、助詞についての学習をまとめます。助詞の中でも格助詞についての整理をします。
 格助詞は10語だけなのでこれを理解すれば「副助詞・接続助詞・終助詞」の理解は簡単です。
「が・の・を・に・と・へ・より・から・で・や」の10語の格助詞について皆さんが作った例文を材料に学習を深めていきます。


「彼が・・・。」と「彼は・・・。」について格助詞と副助詞の違いについて。


「格」というのは,語と語の関係を示す。文の中でどのような役割を持っているのかが助詞によって分る。
「副助詞」の「副」は添えるといういう意味があります。「彼は」の「は」や「彼も」の「も」はどのような意味を添えているのでしょうか。


 以上の説明の後。便覧の助詞のページを読む。質問や分かったことはその後に発表してもらいます。


「が」と「は」の違いについての練習問題1 ①と②の□に仮名1字を入れて1文を完成させなさい。(既知と未知の違い。)


① 先ほど先生に紹介してもらいました私□ 藤 正悟です。よろしくお願いします。
② 私□ 野球大好きな転校生の藤正悟です。よろしくお願いします。


 格助詞についての練習問題2。次の俳句を読んであなたの考えを述べなさい。


① 米洗う前を蛍の二つ三つ
② 米洗う前に蛍の二つ三つ
③ 米洗う前へ蛍の二つ三つ


 格助詞「を」「に」「へ」の違いで俳句の持つ意味が変わってきますね。国語便覧で確認しながら俳句を声に出して読んでみてください。
あなたは①②③のどの句が好きですか。好きな理由も添えて発表してください。


 余 談 失恋の多い男性は、「も」を多用するようである。
  「貴女も きれいですね。」
   やはり 「貴女は きれいです。」でいかなくっちゃー。


 思い出すままに書いてみました。60年ほど昔の授業風景です。活気がありましたね。自由で創造的な授業を実践できましたね。楽しかったですね。よき時代だったのかなあ。

卒寿小論 18 アンドレモジン  <掌編 1>

 木々の葉も色変わり、公園のそこここに落葉の吹きだまりが、音をたて移動し、赤く咲き残るサルビアの花にも、さみしさと人恋しさを感じる季節。


 公職を退いて、早、半年が過ぎ、今では唯一の日課が、こうやって、夕食前の一時、郊外を散策し、公園のベンチで一服することになってしまった。


 現職当時は、退職して自由になったら、あれもしよう、これもしようと思いめぐらしたものだが、いざその環境になってみると、人間が生きていくのに必要な最小限度のことしかやろうとしなくなり、日が経つに従って、それさえもおっくうになってくる。


 彼は今日もいつもと同じように海と山の見える公園のベンチに腰をおろし、タバコに火をつけた。
 景色を眺めるわけでも、人間を観察するわけでも、瞑想にふけるわけでもなく。ただそこに腰をおろす。


 彼がそこに居ようが居まいが、社会とは何等関係がない如く無意味に存在している。


 落日が山の端にかかり、西の方から徐々に影が広がって来た。心もとない西日がかすかに公園を照らし、人影はなくなり、彼の影だけが長く動いていた。


 突然、背後から声をかけられて、彼はぎくっとした。振り返ると、彼よりもずっと立派に見える紳士がそこに立っていた。


 目が美しく力強く輝き、ことば使いが鄭重で礼儀正しい態度が、彼に好感を持たせた。紳士は一瞥すると彼の横に腰をおろした。


「あなた、私は人の性格を自由に変えることのできる物質を造りましたよ。」
「永久的に、ですか。」と、彼はたずねた。
「いいえ、一時的なものですが、そうですね。三日聞ぐらいは効果がありますね。しかし、蓄積していけば半永久的な効果はでると思いますよ。」


「副作用とか。」
「まったく心配いりません。あなた、現代の社会では、どれだけ多くの人々が性格的な問題で悩んでいるか知れません。社会的にだって、性格傾向によって引き起こされる問題が山ほどあります。
 非行少年の問題、夫婦間の問題、外交問題等、多く人間関係の中から誘発される問題には、それぞれの人間の性格的傾向が何等かの形において影響しておりますからね。


 その人が持つ性格傾向をさじかげんひとつで強めたり弱めたりすることによって、攻撃型の人間は従順型の人間に、従順型の人間は攻撃型の人間として変革するわけです。」
 「私のように年を取り、無気力になり、ひっこみ思案になった人間も変えることができますか。」
 「ええ、勿論、活気を取りもどし、積極的になり、生きていることに喜びを感じるようになります。私を見て下さい。七十代に見えますか。」


 「実験例はありますか。」
 「ええ、私の家でも、世間でよくある嫁と姑の仲が悪かったのですが、家内にはアンドレモジンプラスAを嫁にはアンドレモジンマイナスKを秘密裡に食事に混ぜて投与しましたところ効果てき面で、現在ではしごく円満で近所の模範ですよ。」


 「それだけの実験ですか。」


 「とんでもない。昨年の春闘の時でしたよ、ある会社の経営者が相談に見えまして、それから、私が組合の幹部の性格傾向を調査し、物質の調合をしました。なかなか、個人差があるものですから、投与するまでに時間がかかりましたが、円くおさまり、その後、労使の問題はないと聞いております。
 それから、学校の先生も見えましてね。性格異常児の問題だったのですが、これなどはごく簡単に治癒しました。まだ、数え切れない程の実験例があります。」


 「失礼ですが、私にそのクスリをわけてくれませんか。」


 「結構です。二、三日内に性格傾向テストをして、クスリを調合しましよう。あなたを最後の実験例にします。来年はプルテルニアで行われる世界医学会に論文を発表しようと思っております。今日もこれから、論文の整理ですよ、また明日お会いしましよう。」


 老紳士はもうすっかり暗くなった公園の森の中へと姿を消した。


 極細のカーデガンをすかして吹きぬける晩秋の風は冷めたい。
 しかし、アンドレモジンの話にほてった顔には心地良い冷風であった。彼はベンチから腰をあげて路地に出た。


 彼の横に乗用車が静かにすべりより、ヘツドライトを消し、警笛を鳴らした。ふりむくと助手席から男が頭を突き出して声をかけた。


 「六十歳前後の一見紳士風の男を見かけなかったでしょうか。」
 「見ましたが、どうかしましたか。」
 「病院からいなくなりましてね、危険はないんですが。」


 アンドレモジンを造るまでもなく、我々はもうすでに、現代の科学文明の中で、アンドレモジン以上の薬物によって性格を変えられているのではないかしらとふと思うのである。


       アンドレモジンが世に公表されるのも時間の問題である。


      

            季節の花300より サルビア
            花言葉は「全て良し」「エネルギー」

卒寿小論 17 許嫁たがいちがいに <江戸川柳>

       江戸川柳  なぜか好きなんだよな。 なしか?


            

      犬ふぐり 季節の花 https:www.hana300.com/
      花言葉  花言葉は、「忠実」「信頼」「清らか」


1 言いなづけ


  言ひなづけたがいちがいに風を引き


 日本国憲法のもと、結婚の自由が認められ、親の関与が小さくなり当人同士の意思が尊重されるようになった。江戸時代は親の関与が強く、当人たちに関係なく親たちが決めてしまうことが多くあった。
 「たがいちがいに風邪を引く」ような言名付の関係であれば親の方も心配することはあるまい。


 私の知る限りでは、昭和30年代の初めまで言名付という風習が残っていた。同期の男が私の知るただ一人の言名付であった。


 女性の方に男ができて、「駆け落ち」をしてしまった。親たちは二人を取り押さえるために要所に見張りを立てた。駆け落ちの二人は、別々に男は船で女は汽車で示し合わせた目的地へ向かった。
 見張りに立った人たちは「駆け落ち」イコール二人と思い込んでいたために取り押さえることに失敗した。


 昭和の30年代に近松門左衛門の道行きを見るとは思いもよらなかった。


 令和の時代は皇室も結婚に関しても、日本国憲法を持ち出して当人同士の心次第と恋愛の自由を容認する立場を明らかにした。一般国民とは違ってなかなか簡単には済むような問題ではないようだ。幸せな結婚生活を・・・。


2 医 者


  もりあてた医者はほどなく痛み入り


  もりあてる=まぐれ当たりのこと
 薬の調合がまぐれ当たりで治癒した時は、感謝され礼を貰うときは痛み入るだろう。なんて思ってしまう。


  よい後家が出来ると咄す医者仲間   よほどの美人だろう。ありそう。
  仲人にかけては至極名医也      本職そっちのけ。まあいいか。
  上手にも下手にも村の一人医者    しょうがねえ、いないよりいいよ。


3 伊勢の留守


  いせの留守一ト思案(ひとしあん)していやといふ


  参考 亭主が伊勢参宮の留守中の情事には神罰が下って「離れ」無くなるという俗信が
     ある。NOが安全ですぞ。よう考えました。


  ぬけぬぞと女房をおどし伊勢へ立ち   効果あるのかなあ。
  参宮のるすのもうけは男の子      粋な神罰、おめでとう。


 江戸川柳に接すると つい中条きよしのダンチョネ子守歌を口ずさむ
  (作詞 水木れいじ 作曲 徳久広司 歌 中条きよし)


 連れて逃げればろくでなし 捨てて旅だちゃ 人でなし
 ふたり死んでも 花はなし 思いきる気は さらになし
 ああ どのみち 男の人生は 絵にはならない ヨーホホイ ダンチョネ子守歌


 嘘をついても 歳は上 紅を引いても 消せぬ過去
 捨てた故郷は かもめ町 詫びて届かぬ 親不孝
 ああ やっぱり 女の人生も 涙ばかりの ヨーホホイ ダンチョネ子守歌


 どっち向いても 風が吹く 渡る世間の うそ寒さ
 義理と人情 抱いてゆく 昔気質の 馬鹿もいる
 ああ 戻れぬ旅だよ 人生は 酒と添い寝の ヨーホホイ ダンチョネ子守歌