卒寿小論 630 漢詩戯訳を楽しむ「勧酒」

戯訳と言えば、思い出すのが井伏鱒二の「勧酒」于武陵(うぶりょう)の漢詩です。
君に勧む 金屈卮(きんくつし) 満酌(まんしゃく) 辞するを須(もち)いず
花発(はなひら)けば 風雨多し 人生別離足(じんせいべつりた)る
参考 金屈卮=曲がったとっての附いた黄金の杯
満酌=酒をなみなみと杯につぐ。 いっぱいになった杯。
井伏鱒二の戯訳
このさかづきを受けてくれ どうぞなみなみつがしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ 「さよなら」だけが人生だ
太宰治は、酒に酔うと小説の師である井伏鱒二の
「さよならだけが人生だ」を口ずさんでいた。
太宰は、この句に導かれて人生を終えたのかも。
もともと漢詩、五言絶句が好きであったが、
井伏鱒二の戯訳が大きな影響を与えてくれた。
一時、「サヨナラダケガ人生ダ」と読んでいたが、
いつのころからか「サヨナラダケガ人生カ」と読むようになった。
そして米寿を過ぎて、また「サヨナラダケガ人生ダ」と読むようになった。