卒寿小論 302 色食銭空 花が咲く
色も食も銭も、空しいものなのに花が咲く。
理屈抜きに笑えるから笑いなんだよな。
顔 は 見 な い
「聞いてくれ、今はでな女が通った。まず腰帯が金襴、ふんどしが緋ぢりめんに金糸で立浪の縫い取り、おりよく風が吹いて雪のような股が見えた」
「そりゃさだめし、きりょうもよかったろう」
「やぼめ、あお向く間なんかあるものか」 (座笑産)
ご 宣 託
「かくべつ望みもござりませぬが、なろうことなら、お金をたくさん、美しい妾を七八人、そして千年の寿命をお授け下され」と氏神に願をかけると、ある夜の霊夢に、
「もっともの願いなり、しかしその願いがかなうら、おれも神にはなっていぬ」 (軽口福ゑくぼ)
花 盗 人
秘蔵の梅を隣からはさみで切るを見て、旦那大きに腹を立て、久三を呼び、
「アレをキッと叱れ」
「かしこまりました」と、はしごを掛け、塀の屋根へあがり見れば、十七、八の美しき娘が、はさみを持ち、梅の枝を折るていなれば、
「どの枝が欲しい」 (噺雛形)