卒寿小論 382 長生きするのも芸のうち
若い時からひょいと出る言葉の一つに「長生きするのも芸のうち」がありました。
この歳になって、誰が言った言葉だったのか、いつ頃耳にした言葉だったのかが気になりだして考えてみました。
分かりました。私は小学校高学年ぐらいから、ラジオに凝っていて夕食後はラジオを聞いていました。
日曜寄せで午後の7時30分から歌謡曲、8時から漫才落語のお笑いがありました。この8時からのお笑い番組で耳にしたのを思い出しました。
しかし、誰が言ったのかは思い出せませんでした。調べました。
歌人、吉井勇さんが、8代目桂文楽さんへ送った言葉でした。
「長生きも芸のうちぞと落語家の文楽に言ひしはいつの春にや」 吉井 勇
これより、桂文楽がおしゃべりするようになったようです。
8代目桂文楽と言えば初代古今亭志ん生と並んで昭和初期を代表する名人でありました。
テレビ時代になって、初めて志ん生の落語を聞いて笑いましたね。文楽師匠の顔は記憶にあるのですが落語の記憶はありませんね。
ただ、長生きするのも芸のうちという言葉が耳に残り現在まで(88歳)生き続けています。
若いうちは「長生き」をすることが一つの芸だとばかり思っていたのですが、今は、だんだんと歳を重ねるにつけて芸に磨きがかかり輝いてきますよ。と、いう風にとらえています。
中には若くして光り輝くような作品を残して旅立たれた人がいます。彼らは天才です。
芸のない私は、「長生き」することが、芸なのかなあともまた思い始めました。
しかし、芸がなくても歳を重ねると今まで見えなかったことや分からなかったことがだんだんと理解できるようになっていくのを実感します。芸がなくても歳とともに輝きが増すのも「長生きするのも芸のうち」に入れてもよいのかなんて勝手に思っています。
凡人が輝きを持つには、時間がかかります。自然は、凡人に「長生き」をするように寿命を与えてくれたのかも。
「長生きするのも芸のうちか」と、自分勝手に理解しています。