卒寿小論 155 泣くよりもあわれ捨子の <江戸川柳>
菫(すみれ) 季節の花300 https:www.hana300.com/
スミレ全般の花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」
紫は「貞節」「愛」 白は「あどけない恋」「無邪気な恋」「純潔」
黄色は「田園の幸福」「つつましい喜び」
1 摺 鉢(すりばち)
すりばちを借りて亭主のあらを言ひ
江戸の朝は摺鉢で味噌をすることから始まる。味噌汁をつくるにも味噌和えをつくるにも江戸の庶民にとってすりこ木とすり鉢は欠くことのできない調理具である。
朝帰りの亭主との一戦にとばっちりを受けたすり鉢は壊れてしまう。隣にすり鉢を借りに行くと隣の女房も経験者、かっかしている隣の女房に男とはそんなもんだと慰める。
負けてゐなさいと摺鉢かしてやり
すりこ木とすり鉢は江戸の庶民の生活句のいい材料であった。
2 捨 子
今すてる子にありたけの乳をのませ 親心。せつない。
拾はるゝ親はやみから手をあはせ 貧富の格差に手を合わせる。
泣くよりもあわれ捨子のわらひ顔 泣けるなあ。貧しいこととは。
3 粋・帥 (すい)
来ぬが粋ならば伊勢屋と国家老 つぶれちゃうよ。来てよね。
参考 伊勢屋=しまり屋の代名詞。国家老=融通の利かない頑固侍の代名詞。
吉原の名妓、四代目の高尾が曰く「粋じゃ粋じゃと言へど来ぬが粋なりと言えり」行くタイミングだな。どういうタイミングで顔を出すか。粋だね。
4 素壱歩 (すいちぶ)
す壱分はげしなりませであんどする 余裕ないのに来てしまった。
参考 す壱分=一両の四分の一。壱分は吉原の中級遊女の揚げ代。
げし=御寝。寝ることの敬称。壱分かっきり持っての登楼、どうぞお寝なさいと言われて一安心。
ふんどしをひねくり廻し壱分出し 壱分は俺にとっては大変だ。
5 居風呂 (すえぶろ)
居風呂で明日の峠があんじられ もうひと頑張りだな。
大そうな道さとあんまもんで居る どぞ御無事でおかえりなさい。
居風呂のしまいどぶから湯気が立ち 温泉場では1日中立ってますぜ。
6 すがれ
ぶんぶんに寝るが夫婦のすがれ也 静かな遊行ライフです。
参考 すがれ=盛りが過ぎて衰える様子。ぶんぶんに=別々に。
大口をきくのが後家のすがれなり 何も失うものないもん
。
参考 大口=猥談。おおさかのおばちゃんを連想してしまう。失礼。