卒寿小論 338 見たり聞いたり試したり
集 音 機 <気になるねえ ほんとほんと>
殿様、おやしきの物見から、遠めがねのおたのしみ。
「あれなる塔はいずこじゃ」
「ハイ、浅草の観音でござります。こちらの鳥居がみめぐりの稲荷でござります」
殿、よくよくご覧の最中、美しい娘と業平のような若者が寄り添って、何やら話のてい、殿たまりかね、遠めがねを耳へ。 (売集御産寿)
枕詞商い <レベル 高あ>
御所がたに鳥をあきなう者、<霜枯れの芦鴨、足引きの山鳥>と売り歩くのを、青物売り聞いて、負けるものかと<沢辺の根芹は、あらがねの土生姜は>と呼ばわる。
さる御所がたから、中間がひとり出て、はるかにふたりを呼べば、まず鳥売りが近づき、
「足引きの山鳥がいりまするか」ときくとそれではないという。青物売りが、
あらがねの土生姜が御用か」と聞けば、
「いや、それでもない。おれは千早ぶる紙屑買いかと思うて呼んだ」
(初音草噺大鑑)
宿場女郎 <いいね それで一杯いきましょう>
座頭が新宿へ行き、白魚の吸い物が出た。チョッと箸を入れてみると、何か小さな魚、こっそり女郎に聞くと、
「それかえ、生の白すぼしさ」 (春袋)