syougoのブログ

余命ゼロ年代を生きるために

佐伯市のブログ記事

佐伯市(ムラゴンブログ全体)
  • 卒寿小論 194 ちちくりまわす

     大分県では、昭和30年代、学校を出ての最初の赴任地はへき地の学校と決まっていた。 私は県南の学校へ友は県西部の学校へとそれぞれ赴任した。佐伯駅からバスにゆられて数時間峠をいくつか上り下りしてへき地指定の小学校へたどり着いた。 学校に出向く前に腹ごしらえに食堂に入った。昼間から4・5人の日焼けした... 続きをみる

  • 卒寿小論 115 時間の問題じゃのう <掌編28>

     「おばさん、いい養子をもろうたのう」  「どこに、ちがうちがう、ありゃあ下宿人じゃ」  「下宿はじめたんか」  「上から順にみんな外に出っていって、部屋があいちしもうて、もったいねえじゃねえ   か」  「そりゃそうじゃ。だけんど時間の問題じゃのう」  「なにが」  「なにがちゅうて、わかるじゃ... 続きをみる

  • 卒寿小論 71 脱税のおすすめ  <掌編19>

                                                  K 町 役 場  ここは大分県の南の端、いわしと芋の産地K町である。K町におろやんとしめやんという実に仲のよい二人のおばあさんがいた。どうしてこの二人、仲がよいかというと、ちょっとしたわけがあった。  おろ... 続きをみる

  • 卒寿小論 49 ある商人の急死 <掌編13>

                                                                無花果  季節の花300より  「死にましたってなあ。よんべこそ、わけえしに混じって、酒を飲んじょったちゅうがやっぱり心臓麻痺か何んかで、ほう、脳充血ですか、誰れがいつころっとい... 続きをみる

  • 卒寿小論 34 な み だ 橋  <掌編 6>

                          大分合同新聞掲載の挿絵より  国に国境があり、県に県境があるように、血縁の親子の中にも越すに越されぬ境がある。  このなみだ橋は、町と村との境を流れる谷川にかけられている幅三メートル、長さ五メートルほどのごく小さい橋である。小さな橋ではあるが村に住む人々... 続きをみる

  • 卒寿小論 32 母の待つふるさと近き <自選俳句>

                       季節の花300より ねむの木            花言葉は「歓喜」「胸のときめき」                      母の待つふるさと近き合歓の花  正悟   あなたの家の両親も私の家の両親も旅立ってしまった。何とも寂しいことである。  お互いに弟ま... 続きをみる

  • 卒寿小論 29 たった一人の女客 <掌編 4>

                     大分合同新聞掲載のさし絵より  ボラ、チヌ、イサキ、ハマチ、アジなどが釣れはじめると、この僻南の寒村も釣り人たちでにぎわい始める。特に土曜日の午後は泊まり込みの客で満員である。 それを当て込んでか、この地に、ちょっとデラックスな金持ちの退屈しのぎの片棒をかつぐよう... 続きをみる

  • 卒寿小論 26  目 撃 者  <掌編 3>

     安政五年(一八五八年)佐野島大火三十四戸焼失。その年、島民は生活に必死であった。働ける者はみな働いた。漁に畑仕事にと。  源造も夜のあけぬうちから、裏山の段々畑で芋のとこ作リに汗をかき、太平洋の黒い海原から昇る朝日を拝んで一息いれた。 「やせた土地には、さつま芋が一番。」  源造は一人言をいいな... 続きをみる