卒寿小論 202 とゞして居たる草むらの中 (前句)
元禄 前句付け「10」 (前句)とゞして居たる草むらの中
愛(あい)すかと母泣く顔に咲(え)む棄子(すてご) とゞして居たる草むらの中
参考 愛す=あやすに同じ。 棄子と同義に「みかん籠」が用いられた。江戸時代捨て子は「みかん籠」に入れて捨てるのが通例。 とゞ=すわる。座す。
母のなく顔を見てあやしてくれるのかと笑いかけてくる乳飲み子。
せつないなあ。 つらいなあ。 泣けてくる。
芭蕉が41歳の時に出立した野ざらし紀行の冒頭で、捨て子に出会う。
この時の芭蕉のつぶやきが芭蕉の生命観をよく表している。江戸時代の生命観か。
「・・・お前は父に憎まれたのか、母にうとまれたのか。いやいや、父はお前を憎みはすまい、母はお前をうとみはすまい。ただこれすべては天の命であって、お前の生まれついた身の不運を、泣くほかはないのだ。」
と、ひとしお哀れでたもとから食べ物を取り出してそれを与えて通り過ぎた。
「身の不運を天の命として泣くほかはない。」
こんな時代の川柳である。とてもつらい悲しいせつない川柳である。
令和の今はどうなんだ。
なでしこ 季節の花300より