卒寿小論 204 文はやりたし書く手は持たぬ (江戸)
『恋文を書きたいが、字が書けないのでできない、また、恥ずかしくて代筆を頼むこともできない。』
字が下手な私は恋文なるものを一度も書いたことがない。
幸いに電話の普及した時代で音声による意思疎通ができた。
声や話術には、そこそこに自信があった。学生時代に民放の放送劇団に籍を置き声優を目指して毎夜練習に出かけていた。
しかし、字のうまい友達に接すると羨ましく、自分の字のまずさにおののいていたものだ。ところが大学の書道の演習で「優」をもらってびっくりしてしまった。それでも字を書くのは苦手で七〇歳を過ぎた今でも字を書くことに劣等感を持っている。
親戚の中にとても素敵な字を書く男がいる。賀状や暑中見舞いを手にして、大きなため息をつく。
ダンチョネいろは歌
2回続けて 嘘をつけば (アーどうしたどうした)
本当のこともネ うそになる ダンチョネ (エーなんとなんと)