卒寿小論 72 名も呼ばずモシとも言はぬ <江戸川柳>
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花言葉 「豊かさ、財産」「快活」「明るさ」
1 投込(なげこみ)
なげこみと言て生花しかられる
投込=共同墓地の異称。死んだ女郎や行き倒れを葬る所。
三ノ輪の浄閑寺、新宿の成覚寺などは投げ込み寺と呼ばれていた。
生け花でいう「投げ入れ」を投げ込みと言ってしまえば大変な違いである。このような間違いはよくあることで、結婚式で使う言葉と葬式で使う言葉を取り違えた例が記憶に残る。
「お日柄もよく」「ご愁傷さま」「ご会葬」などなど。
穴ほりと言って門松しかられる
墓穴を掘るのを穴掘りというので、「穴掘り」はおめでたい行事では禁句である。
「投げ込み」という言葉からでも人権の格差、貧富の格差は現代では考えられないほどの開きがあった。江戸庶民の生活は幕藩体制の中でどのようなものであったのか。
幕藩の掟は権力者の自由裁量で決められていた。封建体制を突き崩そうとした明治維新を考えることによって現在の政治体制を見直す材料にしたい。
2 仲 人
仲人の夫婦わらいが上手なり 1割は懐に入るぞ
しゅうとはじきに死ぬように仲人言ひ なかなか
仲人はまあなぐさみに見ろと言ひ 無責任な
3 名(な)
なくっても事のかけない女房の名 オイだけで済ましちゃう。
名も呼ばずモシとも言はぬ内が花 アノ、アノと 新妻のういういしさ。
内ぢうの名をいってよぶせわしなさ あるある。上から順に全部呼ぶ。
4 中の町(なかのちょう)
中の町さいたが通る見ともなさ やぼだねえ。ひやかしそれとも見物。
参考 中の町=吉原の中央を貫くメインストリート。
さいたが=刀をさした武士が。
中の町末たのもしくないところ 視界ゼロ。明日が見えません。
中の丁さくらにひとをつなぐ所 桜で人(男)を釣るんだ。
三夕の外の夕暮れ中の町 三夕にまけてない。夕ぐれどき。
参考 三夕(せき)の歌=新古今集に載っている秋に夕暮の三名歌。
見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕ぐれ (定家)
心なき身にもあわれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕ぐれ (西行)
淋しさはその色としもなかりけり 槇立つ山の秋の夕ぐれ (寂蓮)