卒寿小論 301 江戸 笑話集ブーム
にくいね。笑いを社交上の武器として使うなんて見上げたもんだよ。
江戸時代、支配階級として活動するための潤滑油に「笑い」を活用したとは気が付かなかった。
人は笑い合える間柄になって初めて本音の考えが伝わるようで、「笑い」の教養は上級武士としては欠かすことのできない能力であったのだろう。
その基本書を創ったのが、幕府高官(京都所司代)の板倉周防守重宗である。
重宗は安楽案策伝に依頼して、幕府高官のための笑いの参考書を作らせた。その参考書が「醒酔笑」という笑話集である。
これをきっかけに江戸は笑話集ブームが起こった。
安楽庵策伝については項を改めて取り上げることにする。
醒酔笑の編集はよくできている。関敬吾氏の分類を引用する。
1 ことば・もの知らず
愚か村、愚か聟、愚か嫁、愚か者。
2 智恵譚
狡猾―吉四六話、彦市話など
3 性格譚
あわて者、不精者、吝嗇者など
4 誇張譚
とっぽ話、てんぽ話などの大話
5 その他
偶然の幸運など
この分類を参考にそれぞれの小咄を探してみることにする。