卒寿小論 55 過去は野にふし山にふし <江戸川柳>
蒲公英 季節の花 https:www.hana300.com/
花言葉は、「愛の神託」「神託」「真心の愛」「別離」
1 大 名
大名の過去は野にふし山にふし
大名=将軍に直参の一万石以上の武士 野に伏し=野伏というと山に潜む盗賊の意
一番に蜂須賀小六のことを思い出した。講談や太閤記に出てくる小六は野盗の親分とされているが、単なる創作であるらしい。
しかし、このような創作が出てくる背景には江戸庶民の思いが隠されているのではなかろうか。
今でこそ、大名として何不自由のない生活をしているが過去は何をしていたのか分かったものではない。
確かに野に伏し、山に伏して戦をしてのし上がってきたことには間違いないのであるが、中には野盗の親分であったものもいるに違いない。
このような意識と風刺が感じられる。その意識がやがて武士の世界を崩壊させていく原動力になっていったのだろう。
今、国民がどのような意識でこの社会を見ているかで現在の社会システムが変化していく。何百年かかるかは分からないが。日本の政治家のすがたは見えているのか。
インターネットの普及が思わぬ時間を縮めるであろう。
2 棚
人をばおろし我が事は棚へ上げ よくみる光景だ。そんなもんだ。
おろす=こきおろす、非難する。
学問が棚へ上って声がはり 昔の坊やはもういない。
3 鯛
ひだを直しながら鯛の先へ立ち 威儀を正して進物にする鯛。
江戸時代の鯛は、めでたい魚とされ祝に送る習慣があった。特別の魚である。
まだうごく尾へ奉書の紙をかけ 祝いの儀式、ありがたく頂戴。
奉書=上意を奉じて侍臣・右筆(ゆうひつ)らが下す命令の文書。
鯛ぐらいただうんうんと御あいさつ 賄賂流行時代、鯛ではねえ。
鯛肩身釣るまで待つと夫人なり 女の実利主義、まつわ。
鯛肩身=周の国の洒落。太公望が魚釣りの最中に文王に会い、迎えられ
夫人=貴族の妻の敬称。身分の高い女は簡単にはなびかない。まず実利が優先、
いや全てかも。
4 大 小
降参のように大小わたす也 武士の地位など捨てますよ
囚人(めしうど)のやうに大小ひんもがれ 新しい時代を予感
参考 遊里では武士も大小を身辺に置くことは許されず、妓楼へ入るときは大小
を預ける規則になっていた。士農工商への反発が町人が吉原を賛美した背
景にあった。
5 高 尾
参考 高尾=吉原京町三浦屋の遊女。仙台藩主伊達綱宗の身請けを断り、愛人、島
田重三郎に操を立てた。そのために隅田川三叉の辺りの船中でつるし斬りに
されたという俗説がある。
大名がこはいものかと高尾言ひ あっぱれ。女の意気地。