syougoのブログ

余命ゼロ年代を生きるために

卒寿小論 10 俺に似よ <川柳>

    俺に似よ俺に似るなと子を思い  麻生路郎


 親として気になるところだ。俺のような生き方をすることはない。と、思いながらも俺のように生きろと思うこともある。 
 切ない。子を思う親の気持ちは万国共通である。子どもの健康を願い多くの友人たちに恵まれて平穏無事な一生を送って欲しいと願っている。


 この歳になって親の思いを深く考えることができるようになった。これも孫ができひ孫が出来ての暮らしの中で気づいたことである。


参 考
 麻生路郎(あそうじろう)(1888~1965)川柳六大家の一人。本名・幸二郎。肝臓障害で没。享年77。
『広島県尾道市に生まれ。大阪高商卒業後職業を転々としながらも、16歳頃から田能村朴念仁選に投句を始め川柳をスタート。大正13年『川柳雑誌』を創刊。昭和11年には「川柳職業人」を宣言する。「いのちある句を創れ」「1句を残せ」を標榜した。』



  大杉(大杉栄)を殺し思想を取り逃がし
  あの博士今度は民主主義を売り


  だしぬけに鐘の鳴るのも旅のこと
  鼻の偉大さ山脈を思わされ


          飲んで欲しやめても欲しい酒を注ぎ   
           酒豪、麻生路郎の妻(葭乃)の句


          

            優しく切ない酒だよ人生の

卒寿小論 9 鮎にひき <川柳>

    鮎二ひき暫く焼かず皿の上   前田雀郎


 妻の妹が日本画をやっていて、毎年の展示会に作品を出品していた。
毎年作品展の鑑賞に参加するのが年中行事になっていた。
 私は用事を思い出して展示会場を出て、廊下から電話を掛けた。用事を済ませて展示場に戻ろうとしたら、歳の頃なら56・7という背広姿の紳士が妻に話しかけていた。


 私はまだ見ていない作品の方に回って日本画の鑑賞をした。みなさん素人なのに見ごたえのある作品ばかりでいつものことながら感心してしまう。


 話し終えたのか、背広姿の紳士が妻のところから離れていった。
 妻は満足そうな笑顔で私を迎えた。
「貴女も作品を出しているのですか。」
「いいえ、妹が出品しているので観に来ましたの。」
「貴女が立っているだけで絵になります。」と。


 60代に入っているのに10歳は若く見られる上に「立っているだけで絵になる。」とは、素晴らしい表現である。妻の笑顔に納得。

          

        

             梔子(くちなし)
             季節の花300より
         花言葉は「洗練、優雅」「喜びを運ぶ」


    鮎二ひき暫く焼かず皿の上  
    容姿端正な二匹の鮎。焼くに焼かれず眺めいる。いい姿、いい色。


  参 考
 前田雀郎(1897~1960)、戦後川柳六大家の一人。
 『栃木県宇都宮市に生まれ、宇都宮商業卒業後上京して阪井久良岐の門を叩く。都新聞社に入社。『都新聞』に川柳欄を新設。その後川柳誌『みやこ』を創刊する。俳諧味のある作品が多く、川柳の研究にも熱心で、多くの学術書を残した。門下から研究者が多く輩出しています。』


    おそろいをきせても家の子が目立ち  
    子や孫に対する爺ちゃん祖母ちゃんの気持ち。わかるなあ


    学校は面白いかと子に酌がせ
    秋風を覗いて帰る曲り角
    菜の花に内田百閒昼寝する


    萩咲けば思い出される咳一つ
    昭和30年の作品。剣花坊忌の献句。井上剣花坊は山口県萩の士族。

卒寿小論 8 酒とろり身も気も <川柳>

    酒とろり身も気もとろり骨もまた  川上三太郎
      
    いいねえ。それでいいんだよ。骨まで酔って人生を終える。


 しかし、私にはできない。体質的なのか、性格的なのか抑制が効いてすぐにストップをかけてしまう。それでも若い時には身も気もとろりとなるまで飲んだ。
年齢と共に節制の利いた飲み方になってしまった。それはそれで素晴らしいことであると思っている。
が、何か物足りない生き様であるような気がする。羽目を外したり後先を考えずに何かに打ち込んだりして見たいものであるが、適当なところで自然にストップをかけている。
そいう自分を発見し、これはこれでいいんだとつぶやきながら生きてきたような気がする。


             

             和泉先輩の切り絵から 焼酎
 参 考
 川上三太郎 13歳から川柳の道を志し、昭和43年12月、77歳の生涯を終える。
東京・日本橋に生まれ、大倉商業学校を卒業後大倉洋行に入社。そこを退社して東京毎夕新聞に入社。川柳は井上剣花坊の柳樽寺川柳会に所属し、国民川柳会を発足させ、それが現在の川柳研究社となる


    友達のうしろ姿のありがたみ
    友を愛し酒を愛した三太郎の生き方。この句は、吉川英治を詠んだ句。


    しみじみとよくも見飽きぬ友の顔
    子の両手海の広さが言いきれず

    子どもの感動をよく捉えた一句。この感動を誰かに伝えたい。子どもの生きる力が
    伝わって来る。


    わが上に屋根のある幸雨の音      敗戦後屋根のある家に住むのが夢
    焼鮒の小さき顔と酒を飲む       小魚の鮒を肴にちびりちびり たまらん
    せいじかにせいじかがきてみみこすり  狸と狐が現代も耳打ちをするぜ
    六十年鉛筆愛し句を愛し        こんな生き方に憧れるなあ 俺三日坊主
    孤独地蔵花ちりぬるを手に受けず    人生は孤独なんだ。孤独を楽しんで、