卒寿小論 387 英語俳句のルール
英語俳句の基本は、文法にこだわらずに5・7・5のリズム、英語では2・3・2の韻を踏むのが良いようである。季語は考えずに季節感を出し、できるだけ短い単語でまとめる三行詩として創る。
外務省と欧州連合(EU)が主催している俳句コンテストの資料からそのルールをまとめてみよう。
参考資料・英語俳句の作り方
1. 文頭であっても大文字を用いず、文末のピリオドは不要。
固有名詞や”I”以外はすべて小文字で表記
2. 3行で書く
英語俳句は三行で書く。
3. 3行それぞれの音節は2-3-2ぐらいを目安にする。
音節とは、母音または母音の前後に子音を伴う音声のひとまとまり。
4. 一句の中に切れ字を入れる
感動や感嘆を表す「かな」や「けり」に相当するものを英語俳句では、!、―、:(感
嘆符やダッシュやコロン)で表す。
5. できるだけ”I”を使わない。
何よりも客観的描写を良しとする。固有名詞も作品のイメージを限定するのでできるだ
け避ける。
6. be動詞,冠詞、前置詞は省略してよい。
表現を簡潔に、散文的になるのを防ぐ。
7. 時制は、現在形を用いる。
目の前にある情景を一枚の写真に切り取ったような表現を重視。
8. 正確な文法にはこだわらなくてよい。
文法よりも名詞を中心に1行1行を積み重ねてイメージを明確に、散文的にならないよ
うに。
9. 季節感を盛り込む。
季節感を盛り込むために「高校英語俳句選手権」では大きなお題として「秋」を挙げて
います。秋を感じさせる風物を句の中に盛り込む。
英語俳句の実例
週刊ST連載「英語で俳句作りにチャレンジ」金賞作品より。選評は連載筆者の木内徹先生
お題はAugust (8月)
seagulls / near the pleasure boat / down the river in August
「選評」
「カモメが / 8月の河をいく / 遊覧船のそばに」という句意です。
先ずたたみかけるような語感がいいと思います。そして、遊覧船の周りを飛び交うカモメが見えてきます。動詞や形容詞といった用言を一つも使っていません。
名詞と前置詞だけで、有り余る動きを表現できている好例です。いま、眼前の景を見たまま、作者の意志や感情は一切語られていません。それでいて、作者の姿が彷彿として見えてきます。 これぞ英語俳句。
お題は a morning glory (朝顔)
white moon― / cat’s tail touching / a morning glory
『選評』
「白い月―/ 猫の尾が触れる / 朝顔」という句意です。
切れが見事に効いています。スナップ写真のように一瞬を的確に捉え、朝顔を際立たせていなす。これは名句。と膝を打ちました。
作者は意図的だと信じますが、white moonにもcatにも不定冠詞を省略されているところがよく、朝顔には不定冠詞がちゃんとついています。つまり、用言や前置詞や冠詞など、省略できるものは極限まで省略され、物語るものはかくも多いのです。