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余命ゼロ年代を生きるために

卒寿小論 65 やぼにしてゐる事だよと <江戸川柳>

                          

                              椿 季節の花 https:www.hana300.com/
                                     花言葉は、「控えめな優しさ」「誇り」
1 通 


  やぼにしてゐる事だよと通なやつ


 通=遊びや生活において垢抜けして洗練されていること


 先輩の一人にとても通ぶって後輩の面倒を見る男がいた。昼間のお勤めは粋なスーツで、夜の宴席では和服に雪駄という格好で、会を取り仕切り後輩の面倒をよく見た。
 いくら通ぶっても通からははるかにかけ離れていた。男気があって自分の金を気前よく使って、きれいにさっぱりと遊ぶのではなく。
 あとの見返りを計算して、労働組合の金を使い、何といっても人品や風流に欠ける。どうみても通ぶらない方がよい。やぼにしている方がかえって通にみえると思われた。


 垢ぬけて、ダンディーで自分の金を気前よく使って、きれいさっぱりと遊ぶような通の時代はもう過ぎた。


 通ぶる人間とは付き合わない方が身のためである。ろくなことはない。


2 突き目


  ほれていたつき目へ乳のはしり過ぎ   知らぬが仏


  突き目=眼球に受けた外傷。民間療法では乳をたらすとなおるという。
      惚れていた男だったのでつい力が入って男の顔中は乳だらけ。そんなこととは
      つゆ知らず。


  目にたのむ乳から味に道がつき   美しい。目にはもったいない。


  突きもせぬ目に貰ひ乳のひざ枕   うまいことやりやがって、ふてえ野郎だ。


3 通詞(つうじ・通事)


  ほれたのを通詞壱人がおかしがり   因果な役目でござる。


 参考 通詞=通訳官、長崎に住み唐通詞、おらんだ通詞がある。長崎丸山の遊女に惚れての問答を通訳する。通詞はおかしくもあり馬鹿馬鹿しくもある。


  通詞さへ口舌の時はあきれはて    いい加減にしてよ。うんざり。   
    口舌(くぜつ)=痴話げんか。


  来朝に通詞もいらぬ雪の峯    この美しさ。通訳いらない。最高。
    来朝=外国の使者が日本に来ること。 雪の峯=富士山


4 塚


  迷子の塚で名所が一つふえ   永遠に語り継がれる塚を、日本国として。


 参考 謡曲「隅田川」の梅若塚。梅若丸(吉田少将の子)が人買いに誘拐されて東国に下り、隅田川の畔で病死。木母寺(もくぼじ)で法要が修される。


  日本の外聞になる塚一つ  本当に評判になる塚をつくろう。あるだろう。


 参考 京都の豊国神社にある耳塚、朝鮮人戦没者の供養塔。文禄・慶長の役で諸将が敵兵
    の耳を切り取り塩漬けにしたものを秀吉が検分して埋めて供養をした。
    外聞=他人に聞かれること、自分についての世間の噂。評判。面目 名誉。

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