卒寿小論 246 粋は身を食ふ (江戸)
『花柳社会、芸人社会の事情に通じて、「いき」なのを誇っている人は、いつのまにかその道におぼれて財産をなくし、身を滅ぼすことになる。』
昭和三十年代の初め、落語の人気が学生の間に広がった。その一人に「綴り方狂室」で一世を風靡した柳亭痴楽がいた。
落語界のトップにまで上り詰め思うにまかせた生活を送っていたが、晩年はその消息さえも分からないような終わり方をした。
昭和三十六年だったか、真打になったばかりの立川談志の落語を上野の鈴本亭で聞いた。
彼は「いき」に人生を謳歌したようであるが、その実、実生活では、弟子に「挨拶ができれば、喰いっぱぐれることはない」と話していたとか。
彼は芸の上では「いき」を通したが、実生活では「あいさつ」を大事にする常識人としての生活をしていたのかも。
ダンチョネいろは歌
うちのむすこは だいじんさまよ (あーどうしたどうした)
嘘をついたりネ とぼけたり ダンチョネ (エーなんとなんと)